俺様☆キング

悪魔の襲撃、音子の微かな願い

【音子side】

 あの妙な手紙を送られてから嫌がらせは続いていた。もちろん慧は伝える事は出来ずまま…。

 - とある日の朝 -

 いつもの様に登校していた。でも今日はちょっと騒がしかった。騒がしい理由は後ろに黒いバイクが2、3台走っていたから。
 でもそのバイクはさっき現れた訳ではなく、そう私が家を出てからつけられていた。

 ブォーン、ブォーン。

 あぁ、もううるさいなぁ…。なんでついてくるの?
 そう思って私は後ろを向いた途端―――。

 ガシャーン。
 バイクはガードレールを通り越して音子とぶつかった。

「ッ! いったぁ…」

 音子は脚や腕に擦り傷や切り傷が出来ていた。

「おい女、乃亜は危険だ。これ以上ひどくならない内に彼氏から手を打ちな」

 バイクを運転していた男の人がそう言ってバイクで走りだしてしまった。

 どういうこと…? 乃亜って…あの手紙の送り主?
 私には理解が出来なかった。取り合えず保健室に行かなきゃ!

 学校に着くなり保健室に行った。先生には転んだと言って手当してもらった。
 教室に着く頃には1時間目は終わっていた。

 ガラガラ。
 教室の扉を開けた。開けた途端、クラス全員が私を見てシーンとなる空気を感じた。でもすぐに騒がしくなった。なんだろ…私の想い過ごしかな…。

「おはよ」

 私は仲良い子に挨拶した。

「…おはよ」

 友達は私と一切目を合わせずにどっかに行ってしまった。
 えっ…、なに…。それは私は一番予想したくもない状態になってしまっていた。
 頭が真っ白になって自分の席に着いた。そしておもむろに教科書を取り出した。

「っ!!」

 教科書には『死ね』や『裏切り者』などと沢山の批判する文字が書いてあった。
 パラパラとめくっていくと1枚の手紙が挟んであった。

『3時間目抜けて来い。4階の図書室から出てるベランダで待ってる』

 いかにも男子生徒の文面だった。差出人を見てみると慧の名前がそこにはあった。
 慧に会える嬉しい気持ちと慧の事を思い出したら泣きたい気持ちで一杯になった。慧に会って大泣きしよう! そう思った、泣くだけなら慧も受け止めてくれるよね…? そう思いながら2時間目を受けた。

 2時間目が終わり相変わらず友達は話しかけても答えてくれなかった。
 3時間目が始まった途端、先生には具合が悪いと言って授業を抜けた。
 いち早く慧に会いたくて駆け足でベランダに向かった。
 図書室は誰も居なかった、そしてベランダのドアを勢いよく開けた。

「遅いんだけど…」

 そこに居たのは…慧ではなくて手紙の送り主…手越乃亜が居た。

「えっ…何で…」
「初めまして、手越乃亜です。よろしくね音子ちゃん?」
「えっ…慧は…」

 確かに慧の名前があったのに…。

「まさか本気にした訳!? ウケるー」
「は…」
「手紙の送り主は乃亜ちゃんだよ☆」

 乃亜ちゃんって子は軽くウインクした。

「アンタさー、本当に慧の彼女な訳!? 彼女ならさ、慧があの教科書見て何とも思わない訳ないよねー? 一目散にアンタのとこに行くと思うんだけど…? ハハ、音子ちゃん慧の事なーにも分かってないんだね? こんなヤツに私は負けたの…?」

 そう…だよね。この人が言ってる事が正しい。今まで一緒に居て私は慧の何を見ていたんだろう…。そう思うと急に涙が出そうになり下を向いた。

「率直に言うね、慧と別れて」
「…」
「ねぇ言ってる事分かってる?」
「…」
「なんか言えよッ!」

 ガンッ。
 乃亜ちゃんは私を蹴り飛ばした。

「アンタのせいで私は慧を失ったの!! アンタみたいなドブネズミが慧の隣に居て良いと思ってる訳!? 笑わせないでよ。慧には釣り合わない。慧の隣に居て良いのは私だけよっ!!!」
「の…乃亜ちゃん」
「気安く呼ばないで! いい加減、慧を返してよ!! アンタさえ居なければ私は幸せだったのよ!!」
「…慧とは…どういう」
「はぁ? 元カノに決まってるじゃん。アンタが慧を私が奪ったんでしょ!? 人のものに手を出すとどうなるか分かってるんでしょうね!?」

 ガンっ。再び乃亜ちゃんは横たわる私を蹴り飛ばした。

「ゴホっ…」
「どう~? 痛いでしょ? でも私の心の痛みはこんなんじゃ済まないから」
「ゴホ…っ」
「別れるよね慧と…。アンタに拒否権はないから。別れないって言うなら今以上に酷い結末になるから覚悟しときなよ」
「そんな…急には…」

 慧と別れるなんて出来ない…。でもこれ以上は私は無理だよ…辛いよ…。

「そっか…急すぎるわね…。じゃあ2週間猶予あげるわ。今は12月10日だから24日にしてあげたいけど…24日は慧とイブを過ごしたいから23日までね」
「23日…それまでに決断を…」
「はぁ? 23日まで引っ張るなら別れて」
「えっ…」
「アンタに拒否権無いって言ったよね? まぁ別れたくないって言うなら明日の放課後10分だけここで待っててあげるわ」

 乃亜ちゃんは横たわる私の胸倉を掴んだ。
 私には乃亜ちゃんに立ち向かう勇気はない…。もう…限界なんだ…。

「…乃亜ちゃん」
「何、まだ刃向かうつもり?」
「…わ、別れる」
「は?」

 本当はこんな事言いたくもないししたくもない…慧が好きだよ…今もこれからも…ずっとずっと慧が好き…。でも私は遠すぎる人なんだ…、もう私の手には戻ってこない…。慧との生活は幸せ過ぎた。だからこんな嫌がらせが辛い…ごめんね、限界っ…。

「慧と…別れます…」
「本当~? 嬉しい♪」
「でも…23日まで、それまで気持ちが整理がつくまで慧と居させてくださいっ! 最後に慧と一緒に居させて…」
「分かったわ。じゃあ音子ちゃんさ、23日まで居させてあげるから慧と私が付き合う様に協力してくれない? お礼に私の友達で超絶カッコいい人を彼氏にあげるからさぁ♪」

 協力って…慧が他の女の子と手を繋いだり抱きしめたりキスしたりなんて考えたくもないし見たくもない。ましては協力なんて…嫌だ。でも現今、横たわった体を起こす事すら出来ない…。私は、この人に逆らう事すら出来ない…。

「…分かった…」
「ありがと~! 大好き音子ちゃん♪ じゃあ裏切ったらただじゃおかないから。ちなみに慧にも言うのも反則だから」

 そう言って乃亜ちゃんはベランダを出て行ってた。

 私は1人横たわった体をやっと起こし、ただただ1人屋上へ向かった。
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