恋愛の条件
コートを店員に預ける片桐をじっと見つめる。


(この人、髪が濡れておりているとすごく色っぽい。色素うすいなぁ……)


「穴があく」

「えっ?」

「クス、そんなに見つめられると顔に穴があくって」

奈央の目の前に座り濡れた髪を軽くかき上げながら笑う。

その仕草に髪をかき上げないで、下ろして欲しい、と思ってしまった。

「ごめんなさい」

「別に謝らなくていいけど?」

気のせいだろうか、片桐の雰囲気がすごく柔らかい。

喋り方や表情が、というより彼の周りの空気がいつもと違う。

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