雨の中にたたずんで
3.泣けない理由
お通夜には顔だけ出して、すぐに帰ってきた。

本当は恋人なのに、誰にも言えず

高校の教え子という扱いであの場にいるのが

とてもつらかった。



忙しく動き回っているご遺族の中にはもちろん

優輝くんの姿もあったけど、私は見つからないように

友達の輪の中へと身を潜めていた。



見つからなくて良かった。


帰ってきて、喪服を脱ぐとどっと疲れが出てくる。







最後のお別れだけでも、できて良かった・・・






棺の中の優一さんにちゃんとさよならを言えた。



本当は泣き崩れてしまいたい気持ちもあったけど

やっぱり涙は出てこなくて、高校時代優一さんにあこがれてたって子たちは

私なんかよりもわんわん泣いて、私はそれを遠くで見ているだけだった。
< 18 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop