小話帳












雪はそれでも止まない。赤くなりかけている顔を悟られないように、私は笑顔を崩さない。









「そういえばそうだな」

「一昨年、私たちが受験のときは大雪だった」

「あぁ」

「去年。それも雪が降っていたね」

「あぁ」

「そして、一昨年も去年も。

 アンタは私を傘に入れてくれた。」










傘がなくて困っていたら、後ろから話しかけてきていれてくれた。そのときから私きっと。もう彼に…













「今日は?」

「傘忘れた」

「もう狙ってんじゃんお前」









笑う彼。私はまた言葉を、言いたい言葉を。乾いた口から甘い言葉を。












「そして私は、一昨年も去年も貴方が好きだった」

「あぁ……え?」









雪から目を離し、目を開いて私を見る。










「これからもきっと雪が降れば、私は貴方の傘に頼り続ける。

 それと同じように、私、貴方のこと好きで居続けて良いかな?」

「…だめ」

「えー、ひど…」








笑って話を終わらそうとすると、目の前には彼の顔が広がった。










「お前だけが好き続けちゃだめ

 俺もお前を好き続けたい」

「…離さないよ?」

「いいよ」

「離れないよ」

「いいよ。でも、その代わり…」











耳元で囁かれた言葉は、窓の外に降る雪と溶けた
















―雪が降る季節には―










(「傘を頼るのは俺だけにしてくれよ」)
















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