月下の幻 太陽の偽り (仮)
いや、不調なんて物じゃ足りない。

このご時世に公共の場で圏外なんてありえない。

ましてや森の教会ならまだしも駅の近くの教会でだ。

礼拝に来る人もいるだろうに圏外なんて持っての他だ。

「おかしい、何がどうなってるの?」

私はその場を動かず、携帯を高く掲げて振った。

しかしそんなことしても結果は変わらず圏外だった。

「おかしいなぁ、壊れちゃったかな?」

「何かお困りですか?」

「うわぁぁ!?」

突然背後から声がして私は心臓が飛び出しそうになるほど驚いた。

振り向くとそこにはシスターがライトを持ちながら立っていた。

「何かお困りですか?」

二度目の同じ言葉でシスターは私に聞いてくる。

そのしゃべり方は少々不気味な感じがした。

イントネーションや声の高さ自体には違和感はない。

ただ、その同じセリフはまるでコピーされた言葉を二度再生したかのような、そんなしゃべり方だったからだ。
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