高野先生の腕のなか
「好きなんだ。山崎さんのこと。消えてほしくないって、思うんだ」
それは、まるで時間が、世界が、心臓が止まってしまったような。
ふわりと実感のない世界に、漂っているような。
再び心臓が動き出したとき、静かに温かい涙が頬を伝った。
今までこんな涙を流したことがあっただろうか、と思うほどの。
「…私も、好き」
高野の顔がみるみる内に緩んでいって、終いには私をその両腕で包み込んだ。
優しく、大切に。
高野の腕のなかは、暖かくて、心地よかった。
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