はらり、ひとひら。


「そーそー。その呼び方のがしっくりくる。なーに変にかっこつけてんだよ、『兄さん』なんて」

まさか、それを言わせるためだけにやってたのか。…馬鹿だ。意地の悪い大人げない大人だ。


「はあ」

「お年頃って大変だねえ真澄くん? ま、頑張んなさいよ。家業も勉学も、アッチの方も…あだっ」

「もう喋らないで兄さん…」


脛に蹴りを入れ、背を向けて歩き出す。倉庫の中に閉じ込めてやろうか、なんて意地悪い考えが真っ先に浮かんだのは内緒だ。


不意に気が付く。もう、こんなに日が沈んでる。逢魔が時か…早く帰らなきゃ。椎名さんたち、送っていこう。


「…でっかくなったなあ、真澄」

「…? 何か言った?」

「いや。なんにも」


振り向くと存外寂しげな顔の金髪。何その顔、と訊ねると変顔された。


「あ。神崎くーん!」

「ちづ兄ー!」



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