[完]大人の恋の始め方




「っ離して!!
あいつ、許さない!!」


あたしは、優斗さんから逃れようと、必死にもがく。



しかし、彼はそれを許さなくて。



「杏里、落ち着けって!!」


「いやっ!!離して!!」



あんなサイテーな男に、友美は心も身体も傷付けて!!



「杏里!」



ジタバタと暴れるあたしを、必死に止める優斗さんの心が、分からなくて。



「なんで!?なんで止めるの?!
優斗さんも聞いたでしょ!?

あたしの大事な友美をっ、友美をアイツはッッ!!」



そこまで言って、あたしはその場に座り込んだ。



悲しくて、悔しくて。


あんなサイテーな男だって気づかなかった自分が憎くて。



ポロポロと落ちる涙を見て、どうしようもない程、怒りが込み上げる。



「杏里、落ち着け。今お前が行ったって、太刀打ちできるはずない」



「でも!!」


「これは、友美ちゃんと中島蓮の問題だ」



……そんなの、分かってる。


でも、今の友美の姿を思い出して、普通ではいられなくなった。



「杏里の気持ちも分かるよ。
俺だって、今凄い不快だし、いらついてる。

でも、もしかしたら中島蓮は、今惚気るのが恥ずかしいだけだったかもしれないし、マスコミを避けようとしたのかもしれない。


俺たちは、今たまたま聞いただけだ。

もう少し、様子を見よう」



本音を言えば、嫌。
今すぐ殴りたい。


でも、確かにこれは友美と蓮くんの問題。



あたしたちは、一部しか話を聞いていないし。



あたしは、渋々頷いた。



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