[完]大人の恋の始め方
心拍数がドンドン上がる。
「杏里、俺も欲情しないで大切に出来るほど、出来た男じゃない。
大人じゃないんだ。
だから、今すぐ俺から離れろ」
バカ。
そうやって実は優しいとこ、だいすき。
でも…
「……いや」
あたしは、強く否定した。
誘いにくらい、乗ってほしい。
言葉にするのは、恥ずかしいから。
「いや、ってお前なぁ」
「いいもん。
あたし、優斗さんとなら後悔しない。
今も、これからも、ずっといい思い出になるもん。
あたしは、優斗さんに
大人にしてほしいの…」
優斗さんの頬に手を置き、ゆっくりと唇を重ねる。
すると、より深く。より熱く。
何倍も濃いキスが、全身に降り注ぐ。
時々、強く吸われ、ピクッと反応するあたしを、楽しむ。
優斗さん。
本当は、ちょっと怖かったの。
でもね?
やっぱり優斗さんとなら、それも平気だった。
だって、優斗さんなら信じられるから。
あたしの心を溶かしたのは、貴方だから。
クリスマスの夜。
あたしは優斗さんに、あたしの一生を捧げた。
二つの影が重なるこの夜。
いつの間にか、雪が降り出していた。