[完]大人の恋の始め方




部屋の中に入ると、あたしと先生しかいなかった。



「お、残して悪いな?」


「いえ!」


あたしは、ソファーに座る先生に、そっと近付いた。



「あの、それでご用件は?」


先生は、ソファーの端にズレ、少し開けてくれた。



あたしは、そこにチョコンと座った。


大きな身体を、目一杯縮こまらせて。



狭いわけでは無くて、緊張しているためだった。


「そんな緊張するなよ。松本、お前体育祭の実行委員になってくれないか?」



体育祭の実行委員とは、その名の通り、体育祭の競技を考え、そのための準備、また会場造りをするとき指示者になったりする。



リーダーシップが取れる子や、運動がだいすきな子が、この実行委員をやることが多い。


男女1人ずつで、確か去年は、女子が中々決まらなかった覚えがある。



だけど今年は…?


目の前にいる、この大翔先生に近付こうと、たくさんの女の子が立候補するだろう。



「先生、あたしじゃなくても、今回は沢山立候補者が出ると思いますよ?だから、あたしに頼まなくても、やってくれる人は」



あたしが話していると、急に笑いだす先生。



「違うよ、松本さん。俺は、松本さんなら、騒がずに、ちゃんとやってくれるって思って頼んでるんだよ」



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