もっと大切にする~再会のキスは突然に~

「ありがと、繭子ちゃん。あ~あ、繭子ちゃんが男だったら絶対彼氏になってもらうのに。」

口を尖らせてかなり本気で言ってしまう。

「私、男役!?う~ん、複雑…」

苦笑する繭子ちゃんも、何だかすっきりしたような顔をしていて、私達は漸く笑顔で乾杯をする。



私の偏見なのかもしれないけど、看護師ってみんなよく食べると思うな。

仕事の忙しさのせいなのかもしれないし、過酷な仕事のストレス発散なのかもしれないし、何の理由もないのかもしれないけど、とにかく私の周りは私も含めそういう人ばかり。

看護学生の時の実習中から、なにか失敗したり落ち込んだりするたびにみんなで集まってハチャメチャに飲んだり食べたりしていたから、私って単純だと思いながらも次から次へと出される料理を口に運ぶ。

昨日まで笑っていた人が突然亡くなってしまうようなコトが日常的に起こり得る現場で、私達は『 忘れること』 も上手くなっていくようで。

こうやって食べて、笑って、寝てしまえば、『綺麗な彼女』の事も忘れられそうな気がしていた。
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