エロスからタナトスへ
次の日には、家に戻った。

「今日は、仕事に行くけど、もう大丈夫だね。」

ジョンフンは、額にキスしてくれた。

そのキスで、今までのありとあらゆる気持ちが、

すーっと落ち着くのがわかった。

まるで、眠っていたシンデレラが王子のキスで、目覚めたように…

「行ってらっしゃい。」

「行ってきます。あ、ソンミンさんが、一緒に日本に行ってくれるって。

 今日、その相談に来てくれるから。」

「そう?」

「じゃ。」

彼を信じなくて、何を信じるというのだろう。

そんなことに気づこうとしなかった、自分の愚かさが

つくづくいやになった。

そして、ソンミンさんにこんなにお世話になっている。

自分のことを気にかけてくれる人がいる。

自分のことで、いっぱいいっぱいだったけれど、

ちょっと視線をはずせば、生きるの死ぬのを決めるのは、

自分じゃなかった。

生かされている。

そういうことなんだ。


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