エロスからタナトスへ
ところが、着いてみると、

それらしい雰囲気がない。

菜穂さんの携帯に電話してみた。

「菜穂さん、詩雨子ですけど。

 今、デパートの近くにいるんですけど···」

「あ、詩雨子さん?私も来たんだけど、なんか変よねぇ。」

「日本人らしき人の集まりが、見当たらないんです。」

「私のほうは、何人かいるわよ。その人たちに聞いたら、

 やっぱりジョンフンのサイン会に来たって言ってるから···」

「私、場所を間違えたのかしら?」

「デパートの南の入り口よ。」

「方向がわかんないけど、たぶん間違ってると思います。」

「でも、こっちも案内もないし···中止なのかしら。」

「え?そんなこと!」

「たまにあるみたいよ。でも、それならそういう案内があっても

 いいと思うんだけど。」

「とにかく、菜穂さんのところへ行きます。

 南口ですね。」

「ええ。待ってるわ。」


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