美味しい時間

はぁ? 今、なんて言った? 私の記憶が正しければ、

『俺の分の弁当作ってきてくれるか?』

と、言ったよね?
な、何で私が課長のお弁当を作らなきゃいけないんだっ!
ブワッと込みあげてきた怒りが、態度に現れる。
テーブルを両手でバンっと叩きながら立ち上がり、大声を出してしまう。

「嫌ですっ!!!」

「いいの? そんな大きな声出して。もっと目立っちゃうけど」

平然と、そう言ってのける課長。
呆れてものが言えないんですけど……。
一気に身体の力が抜けて椅子に座り込むと、未だに納得がいかない交換条件を、ボソボソと聞き返す。

「お弁当作ってくれば、そこからいなくなってくれるんですね?」

「男に二言はないっ!」

「分かりました。作ってくるから、さっさと行っちゃって下さいっ」

「あっ俺、甘い卵焼きが好きだから。よろしくっ!」


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