美味しい時間

食事も終わろうとした頃、ふとキッチンカウンターに目がいった。
そこには数種類のフルーツが置いてある。

「あのフルーツ、慶太郎さんが買ってきてくれたんですか?」

「あぁ。もし熱で食事取れそうになかったら、果物の方がいいかと思って」

ひとり暮らしを始めてから、病気のたびに心細い思いをしていたけど、今回はそんな思いを全くすることなく過ごせている。
課長がいるから……。
嬉しさと幸せと感謝の気持ちで課長を見つめていると、瞳に涙が溜まってきてしまった。瞬きをすれば溢れてしまいそうだ。

「どうした?」

私の顔を見て、心配そうに覗き込む。

「ひとりじゃないんだと思ったら、なんか幸せで……」

涙がひとすじ、頬を伝う。

「馬鹿だなぁ」

向かい側からすっと手を伸ばすと頬に手を当て、その涙を拭ってくれた。
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