美味しい時間

今までは自分の分の食材だけでよかったから、会社が休みの土日にまとめて買い物をしていた。でもこれからは二人分。二人分……。
二人分って響き。うん、いかにも恋人って感じじゃない。
なんか私、ニヤニヤしちゃって締まりのない顔をしてるよね。

「百花。仕事中にその顔はマズいんじゃないの?」

あっ、そっか。ここ会社だったんだ……。

「すみません、美和先輩」

「まっ私は一向に構わないんだけど」

そう言って笑うと、一方に指差した。
その先を見てみると課長と目が合う。
わっわっわっ、見られてたっ!! 恥ずかしい……。

こういうことが初めてで、どう気持ちを切り替えていいのか分からない。
同じ職場、それも相手は上司。いろんな意味でバレないようにしなくちゃいけないんだけど……。

「上手くいってるみたいで何より」

美和先輩にそう言われ、少し顔を赤らめ俯いた。
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