おっさんと女子高生

「嬢ちゃん、泊まってくのか?」

とりあえず声をかけてみるが反応はなかった。

「俺のメシは?」

テーブルの上を見ると、ちゃんと野菜炒めらしきものがのっていたので、そのまま彼女を寝かせてやることにした。

彼女は俺の知らないうちに来て、俺の知らないうちに帰っていく。泊まることが多いが、朝方には家を出る。朝飯はちゃんと作ってくれる。

布団は幸い二式あったので、某漫画の青いタヌキとメガネのように、部屋に敷く方と押し入れに敷く方とで分けている。俺は青いタヌキと同じだ。

いつの間にか嬢ちゃんは勝手に俺の風呂場に自分のシャンプーを置き、歯ブラシを洗面所に置いていた。
風呂あがりは勝手に俺のジャージを裾を折って着ていた。
図々しいを飛び越えて気にならないレベルだった。

「嬢ちゃん」

布団覆われている彼女があまりにも静かだから、気になって呼びかけた。返事はない。

忍び足で枕元に近寄って、かけ布団をそっと持ち上げてみた。
…………そしてまた、彼女の頭の上にかけた。

クサイものに蓋をするとは、まさにこういうことなのか。
これで俺は、彼女の濡れた睫毛のワケを尋ねなくてもよいことになった。

だから俺は駄目なんだ。いつまでたっても結婚できない。泣いてる女の慰め方なんて、そんなもん知らねーよ。
< 10 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop