おっさんと女子高生

再び小さく舌打ちした彼女は、タクを汚物でも見るような目で見下ろしている。

俺がその視線を遮るようにタクの側に近寄り、タクの左側に座り、彼女を手招きした。

彼女は冷たい目をしたままタクの右側に行き、そのまま座ると思いきやハヤシライスを持って俺の左側に移動してきた。

だが、まるい小さなちゃぶ台のためにタクと向かい合った形になり、それに気づいた彼女は不機嫌そうにうつむいた。

「リアル女子高生!リアル手作り!いただきっす!」

彼女の不機嫌さに知ってか知らずか、タクは笑顔を崩さずにスプーンを動かす。

「いいなぁ先輩、毎日奥さんのお出迎えに奥さんの手料理か」
「だから違う。なぁ、嬢ちゃん?」
「知らない」
「先輩、奥さんツンツンっすね」
「………それより嬢ちゃん、今日なんかあったか?さっきまで機嫌よかったじゃねぇか」
「知らない」

ハヤシライスの暑さのせいか、先ほどの新妻ゴッコの恥ずかしさのせいか、彼女は真っ赤になりながらスプーンをくわえる。

「………タクのせいだぞ。今日は貴重な日だったのに」
「イエスノーマクラでいうイエスの日っすか」
「そうそう」
「でも先輩、オレ先輩が羨ましいっす。こんな可愛い奥さんが同じ空間にいるなんて」
「………そうかぁ?」
まぁ、確かに連日コンビニ弁当の頃より幸せだ。

その後、彼女は急に機嫌がよくなって、タクにプリンをサービスしていた。女心は秋の空だな。俺にはよくわからない。
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