おっさんと女子高生

「おっさん、猫買っていい?」

バケツをひっくり返したような大雨。部屋のなかは湿気でじめじめして、布団に寝転がりたいがそれが鬱陶しくて畳の上でうつぶせに倒れていた。

そんなとき彼女がやってきた。急に降った雨だったためか、傘もささずに髪も制服もずぶ濡れで。そしてその腕には彼女と同じように雨に濡れた猫がいた。

真っ黒な、夜空から飛び降りてきたような子猫で、濡れているせいか痩せて見えた。猫は暴れずおとなしく彼女に抱かれ、黄色く輝く目で俺を見つめている。

「ねぇ、飼っていい?」

彼女が再び発した声で我に帰る。偶然首にかけていたタオルを慌てて彼女の頭の上に被せ、がしがしと髪の毛を拭いてやる。

首が左右に揺れて俺のされるがままになりつつも、彼女は俺を何か訴えるような目で見ていた。

「無理に決まってるだろ?こんなボロアパートでペットオッケーなんて滅多にねぇよ」

不満たらたらな顔をして俺を睨む。そんな顔したって無理なものは無理なんだよ。

「ダンボールに入ってたの。貰って下さいだって」
「おいおい。典型的だな」

猫に顔を近づけて頭を撫でてやろうとした。すると今までおとなしく弱々しかった猫が急に野性的な目をし、ニヤッと短くないて俺の鼻にパンチをかました。
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