バイオレンス・ダーリン!?

「……なかなか言うじゃない」

「いやいや、波月は聞けないだろー」


 ふたりの間ににゅっと湧いて出たのは、言わずと知れた矢柴慎吾。
 ご主人様のいるところに下僕あり、とばかりに遠い席からわざわざ移動してきたのだ。律儀な奴である。


「波月は超絶意地っ張りなお姫様だから。間違って一目惚れなんてことになっても、相手に名前なんて死んでも聞けないと思うよ?」

「それって、女王様の間違いのような気も」

「あんたらそれは、あたしのこと馬鹿にしてるのか?」


 してないしてない。ふたりは同時に首をふるふると横に振った。

 怒れる女王様――もとい、波月の教育的指導は、ふたりとも出来るなら避けたいところであったから。

< 20 / 32 >

この作品をシェア

pagetop