悪魔の熱情リブレット
第十四幕



 シャッテンブルクの鐘が鳴る。

時刻は午後三時。

シルヴェスターはその重々しい響きに耳を傾けながら、ざわつく心を落ち着けようと深呼吸した。

「主よ…。遅いですね。ティアナ様はまだ見つからないのでしょうか…?」

命令通り待っているが、少女が帰ってくる様子はない。

浮かない表情で彼が再び大きく息を吸い込んだ時だった。

「よっ!聞いたぞ!ベリアルと遊んでたらしいな」

何もない空間からバシンが現れた。

彼お得意の瞬間移動でやって来る。

神出鬼没な悪魔だ。

「ベリアルなんて思い出したくもありません。話題にしないで下さい」

素っ気ない返事にバシンはカラカラと笑った。

「まあ、いいじゃないか!それより、お嬢ちゃんはどこだ?新しい種持ってきたんだが…」

これから育てる植物の種が入った袋をテーブルに置こうとしたバシン。

しかし、できなかった。

「ありゃ?何でテーブル真っ二つ…?」

「主が壊しました。実は、ティアナ様がどこにもいなくて…。今、主が町の外に探しに出ています」


< 212 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop