悪魔の熱情リブレット
第十六幕



 四十四万四千三百九十七。



四十四万四千三百九十八。




四十四万四千三百九十九。


「次で丁度四十四万四千四百になるよ~。頑張って~、アンドラス」

鎖で繋がれた白い悪魔にヴォラクは声援を送った。

ここは魔界。

再びミカエルに負け、岩に縛りつけられたアンドラス。

今から四十四万四千四百回目の鎖破りを試みる予定だ。

ティアナが死んで、かれこれ百年は経っただろうか。

アンドラスはこの百年間、シャッテンブルクに戻ることなく天への攻撃を繰り返していた。

四十四万四千三百九十九回たたきのめされ、それと同じ数だけ鎖を自力で解いた。

彼は諦めなかった。

何百年かかろうともティアナの魂を奪うと心に誓っていた。

「ティ…ア…ナ…」

もう掠れた声しか出ない。

呼吸を乱しながら、体力の限界で石のように重い体を動かそうと必死になる。

そんなアンドラスをヴォラクは助けるでもなく、ただじっと側で見守っていた。

手助けしようかと思った時期もあった。

けれど、気づいた。



――アンドラスはそんなこと望んでないや…


< 232 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop