悪魔の熱情リブレット

教会の中は一言で言うならば白だ。

ここはプロテスタント教会であるため、カトリックのように派手な造りはしていない。

ゆえに聖人の像や凝ったステンドグラスなどはここには存在しない。

ティアナは祭壇近くの木の長椅子に座り、祈りの姿勢をとった。

「天にまします我らの父よ…」

日課となった「主の祈り」を唱える。

そして、黙祷。

(みんなが天国にいて、幸せでありますように)

彼女は死んでしまったこの町の住人に祈りを捧げているのだ。

「ママ…」

祭壇の十字架を見上げながら呼びかける。

「ママ、ごめんなさい。私がいたからママは死んじゃった。ママが私を、町の人から守ってくれてたことは覚えてる。みんなが私を見て悪魔の子って言ったのに、ママはいつも私に優しかった。でも、だからこそ…」

少女は涙目になり俯いた。

「ごめんなさい…」

(迷惑をかけて、ママを苦しめて。こんな私、いなかったらみんな幸せだった?)

少なくともティアナへの予言がなければ、まだ皆生きていただろう。

「ごめんなさい…」

涙が溢れて止まらない。


――生まれてきて、ごめんなさい…


祈りなのか懺悔なのか、ティアナ自身にもわからない。

ただ自分が赦せなくて、誰かに赦してもらいたくて、小さな少女は泣きながら謝り続けたのだった。


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