悪魔の熱情リブレット
第五幕


 地獄の奥底で灼熱の炎が爆ぜる。

漆黒の悪魔は疲れたような眼差しでその炎を見つめ、束の間の休息をとっていた。

また直ぐに人間界に呼び出されるだろう。

今回の契約者は悪魔使いが荒い。

いずれ魂を頂き地獄で散々になぶってやろう。

彼は自分の黒髪を撫でつけながら恐ろしい計画を頭の中でイメージする。

その時、ふと彼は思い出した。

「あれはどこだ…?」

「あれ」とは彼の所有物。

「私は最後、あれをどこにやった…?」

つい最近使用した気がするが、なかなか答えが出ない。

美麗な悪魔が悶々と考えていると、素っ頓狂な声が聞こえてきた。

「ウヨッホ~!!??何で俺様はここにいるんだぁ!?」

見ずともわかる。

「…バシンか…」

考え事を邪魔され不機嫌になる彼。

「あんれ~?お嬢ちゃんのところに行くはずだったのに、何であんたのところに出たんだ?」

いきなり瞬間移動してきたバシンが坊主頭をぽりぽりと掻く。

「…あそうだ!『近頃ますます可愛くなったお嬢ちゃんを狙ってるあんたが最近音沙汰無しで清々するな~』なんて考えながら移動したからか!!」

バシンは死にたいのだろうか。

そう思った彼だったが、先程の無礼な発言内容を脳内で反芻させ、大笑いした。


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