【短編】カフェ・モカ
エリちゃん
キミとエリちゃんが並んで歩くのを見かける度に、吐き気と眩暈に襲われる日々だった。

“ジェラシー”っていうよりは、もっとネチネチした感情だ。

“じぇらしぃ”ってほうが表現に合っている。

だけど、時間とともにキミもエリちゃんもあたしの中で消化されつつあった。

街を鮮やかに彩った紅葉たちは跡形もなく消え去っていた。

木々は寂しげに枝を垂らしている。

行き交う人々もマフラーやコートを身にまとい、じんわりと冬が近づいていることを教えてくれる。

今日はあたしの好きなグレーのタートルネックのニット。
タートルな部分をクイっと伸ばして首を縮める。

あの約束の日以来、“cafe・sunset”には行かなくなった。

キミに会うのが辛いから。

ううん、違う。

嫌いな自分をキミに見せてしまうのが辛いからだ。

街頭に寄りかかり、冷えた手とあったかい缶コーヒーをポケットにしまいこむ。

はぁ･･･というため息が白くなって消えてゆく。

「遅いなぁ･･･。」

今日は合コンなのだ。

いわゆる投げやり状態なあたしを見かねたサトルくんが、わざわざセッティングしてくれたのだ。

彼氏を作ってキミに紹介したら、自分にも諦めがつくかもしれない。

そんな考えからのことだった。
< 21 / 37 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop