恋率方程式
参考書なんて必要ない




−翌朝−

ゆっくりと起き上がると、いつもの小さいスプリングベッドではない。大きくてフカフカしたベッド。
そういえば、と青年−−アルトのことを思い出す。

辺りを見渡すと、ソファーには誰もいなく、昨日外した窓も直されていた。
もしや、逃げたのではないか、と疑念が浮かぶ。そうだとしたら、殺されるかも知れない。とっさにそう思ったイチはベッドから飛び出す。そしてドアに手をかけた瞬間−−

ガチャ−−

「お、起きたか。おはよう!」

朝から眩しい笑顔を持った青年が現れた。
一瞬顔が強張ったがすぐに出てしまった右手を戻す。

「朝食を持ってきたぞ。」

そういってイチの前へサンドイッチを載せたトレー置く。よく見ると、少し雑でアルトが作ったものだと思われる。


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