恋率方程式




「っ!?」

イチの声が聞こえた。





「泣き止んで、くれ」





確かに聞こえる。
話すことに慣れていないような片言な声。


スッ…


「顔が、くしゃくしゃ、だ。」





確かに感じる。
頬の涙をスッと拭うその先には白く細い腕。



「…イチ……?」
「よか、た。」


顔を上げれば、腕の中で小さく笑うイチ。


「ほら、笑える、ぞ?」
「……イチ!!!」


よかった。
ほんとうによかった。


ほしかった笑顔がここにある。
小さく弱々しいけどここにある。
まだ笑っている。


ギュッと抱きしめた。
腕が痛いだなんてそんなのもう忘れた。



イチ。
ありがとう。
生きていてくれてありがとう。



イチのおかげで、心の穴がふさがった。


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「ま、待ってくださいっ!」 冷たい風が体に当たる暗闇の中、僕がはいた白い息だけがヒュゥ…っと音を立てる。 思わずそういって僕は彼を引き止めた。 言ってからすごい後悔した。でも勝手に口から出てきたんだからしょうがないと思う。 街頭に照らされてキラキラと光る彼の銀髪。短髪ともボサボサ髪とも言えるそれをまとって僕の方を振り返る。 「…なに?」 だるそうな顔に眠そうな目。 細く薄い体を丸めて廃材の上にしゃがんでいる。 その姿と光景はとても奇妙…珍妙とも言えるだろう。 冷や汗の代わりに冷たい風が僕の体を覆う。 …寒い。 …なんでこんな人と関わろうと思ったんだろう? それを思っていてもなお、僕は言葉を続ける。 「ぼ、僕を…」 唇が寒さと怯えで震える。 友人と話しをすることすら苦手なのに、この見知らぬ人で変な人としゃべろうとしていることが驚きだ。 緊張、恐怖、寒さ、興奮… それらが混じり合って今の僕を作っている。 怖い…怖いよう… でも。 −−今、ここで言わないと…! ガタガタと震える体に喝を入れ、拳をギュッと握る。 「ぼ、僕を…一緒に連れていってくださいっ…!」 彼がニッと少しだけ笑ったように見えた。

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