。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


白衣を受け取って、あたしは金魚を戒の部屋に置いてきた。


“戒へ。花火大会のお土産です。可愛がってね”


と、短い置手紙を添えて。


その日、戒はバイトに出る時間までに家に帰ってくることはなかった。


同じ時間にシフトを入れてたわけだけど、店には時間通りきっちり現れ、普段どおり仕事に励んでいた。


「どこ行ってたんだよ」


その一言が言い出せないあたし。


バイトはあたしの方が早くあがり、時間差で帰ってきたあいつは家の中でも普段通り。


昨日食欲がなさそうだったのに、今日はいつもどおり旺盛な食欲だったし。


「タクさん、この揚げ出しナス要らないの~?食べないんなら僕が食べてあげる♪」


なんて言ってタクのおかずまで奪っているぐらいだったからな。


「要らないなんて一言も言ってねぇだろ!ってか返せ!!」とタクが身を乗り出し、


「うっせぇ!食事ぐらい静かにしろ!!」


バン!とあたしがちゃぶ台を叩くそのタイミングまでもいつも通り。


結局最後には、


「タクさん、俺のをあげますよ」とキョウスケが自分の分を差し出して、喧嘩(?)は治まり。


ってか毎度同じみのパターンだよな。


昨日の変な雰囲気がまるで嘘のようだった。





―――

――


相変わらず賑やかな食事を終えて風呂に入り終わり、何とな~く居間を覗くと、戒の姿はなかった。


キョウスケは壱衣とタクに挟まれて、強引に麻雀をつき合わされていた。


キョウスケがここに居るってことは、あいつは今一人ってことか……






< 106 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop