。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
とりあえず、お風呂の湯が泡で湯の中が見えないようになってて良かった。
そのことにほぅと安心の息を吐く。
お湯からちらりと覗いた、あたしの胸に彫られた紋をそっと押さえるとちょっと緊張が和らいだ気がした。
戒が脚を湯に入れる際にちらりと見えた、太ももの内側に掘られた昇り龍。
黄龍は―――
つがいの龍だ。
あたしと対になっている龍は叔父貴の背中に彫られた龍だったけれど―――
あたし、今夜から戒の龍と対になる。
鏡越しに見る戒の体は、やっぱりしなやかできれいな筋肉がついていて、
元軍人(正確には仕官学校出で、軍隊に入隊していたわけではないので軍人ではありません)だからもっとごっついマッチョかと思いきや、
アスリートのようなしなやかで無駄のない筋肉だ。
明るい紅茶色の髪の先からシャワーの雫がしたたり落ちていて、何て言うの?
色っぽい…
「あんまジロジロ見んといてや」
戒は恥ずかしそうに僅かに顔を逸らすと、その横顔がほんのりピンク色に染まっていた。
「す、すすすすみまそん!」
「「………」」
ぎゃぁ!噛んだ!!ってかあたしどもり過ぎ!
あまりの恥ずかしさに思わず顎の先を湯に入れると、
「すみまそんって!お前可愛いな~♪ってかお前のお陰で緊張が抜けた」
あたしの変な返事に戒はちょっと笑って、あたしの頭を撫で撫でしながら湯に沈み込む。
あたしのすぐ背後に戒が座り込み、戒の脚の間にあたしが入り込む形になった。
戒の自然な行動にあたしは固まったまま身動きが取れず。
慣れてんな~……
し、しかし!あ、あんまり密着できない。万一でも戒の倅に触れてしまったら……
ぎぇえええ!
想像するなよ!あたし!!!
一人であたふたしているあたしの背後で、戒はいくらか緊張を解いたのか、多少ぎこちないものの、バスタブの淵に腕を乗せた。
でも……
「……緊張…してたの?」
おずおずと聞くと、
「そらするわ。へたうったらどないしよーとか」
と戒はさらり。
戒でも緊張することってあるんだな。
良かった。あたしだけドキドキしてたわけじゃないんだ。