。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。

*鴇田Side*





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―* 鴇田Side *―



響輔の運転する車がもの凄いスピードで遠ざかっていく。


車の中でお嬢と虎間の喚き声が聞こえてきそうで俺は思わず苦笑い。


だがそうのんびりもしていられない。車が視界から完全に消えるのを確認すると俺は龍崎グループの本社、エントランスホールの自動扉をくぐった。


ケータイを取り出して電話を掛けながら、受付の前を通り過ぎると、


受付嬢たちが俺の姿を見て少し驚いたような表情を浮かべ、だがすぐに


「お疲れ様でございます」と慌てて頭を下げる。


俺は小さく手を挙げて、エレベーターホールに向かうと“昇”ボタンを苛々と連打した。


だが連打したところで、エレベーターが急下降してくるわけでもない。


俺の気持ちを裏切るように、上層階でのろのろとランプが点滅している。


「ちっ」


俺は舌打ちして身を翻した。


再びエントランスホールに向かうと、中央部分にあるエスカレーターを駆け上がった。


こっちの方が早い。


エスカレーターを駆け上っている最中に、目的の電話の相手が通話に出た。確認したいことは思った以上に手早く知ることができて多少の苛立ちは治まったが。


そこからエレベーターに乗り換え、俺は壁にもたれかかって深く息をついた。





イチ―――……とうとう動き出したか。





一瞬そう思ったが、


だが、あれはイチの仕業じゃない。


大体俺が知る限り、イチはマシンガンを扱える女じゃない。


隠れた才能があるなら別だが、それでもあの細腕では物理的に無理だ。


それに今イチのマネージャーに確認した(電話の相手だ)が、あいつは今名古屋でバラエティ番組の収録中だった。


放送は来月になるようだが、ひつまぶしを食べながらご機嫌だとか。


イチじゃないとすると―――……





お嬢があの場に居なかったら、俺は―――……





その先を考えてじっとりと手のひらに汗が浮かぶのが分かった。





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