。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「あら、ステキ♪私は彼の家政婦?それともデリヘル??」
普段の丁寧な口調から一転、皮肉を込めてキリは少し意地悪そうに笑ってゆっくりと立ち上がる。
「セクハラで訴えることも可能ですよ」
「やめておけ。ヤクザ相手に無駄だ」
俺はキリを少しだけ冷たく見下ろして、それでも諦めたように肩の力を抜いた。
「お前は俺の恋人だ。今日からな。
だから三日間うちに居ても何も問題ない」
俺が吐息をついて言うと、
会長とキリはしたり顔で顔を見合わせた。
「Wow!作戦勝ちね」
「ちっ。負けたよ」
会長はスーツのポケットから長財布を取り出して、そこから万札を引き抜くとキリに手渡した。
「お前がどう対処するのか賭けてたんだ。俺はスルーするに賭けたが、キリは違うほうに賭けた」
「そゆうこと♪勝たせてくれてありがとう」
キリの楽しそうな声があがって、会長とキリはハイタッチをしている。
作戦―――……賭け―――!
会長はにやにや笑って、キリは小さくウィンクを寄越してくる。
俺は二人の作戦にまんまとハマってしまったわけだ。
寝返る?裏切る……?
そんなことを一瞬でも心配した俺がバカだった。
返す言葉もない。唖然として二人を眺めていると、
「恋人にしてくれなんて重いこと言わないわ。ただあなたを少しだけ独占したかっただけ。
悪く思わないで」
ちゅっと頬にキスをすると、キリは色っぽく腰と尻を振って会長室から出て行こうとした。
その後ろ姿に向かって会長が呼び止める。
「キリ、出張ついでに頼まれごとだ。今週末、パーティー衣装を選びに行くのに同行してくれ」
俺の事故や入院で伸びてしまっていた件か。今週末に予定したわけだな。
キリが髪を優雅になびかせ振り返る。
「私が見立てなくても、会長はとてもいいセンスを持っていらっしゃると思いますが?」
「メンバーに問題があってね。お前が居れば朔羅も安心できるかと思うからな」
会長は少しだけ寂しそうに―――微笑んだ。