。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



イチは出て行こうとする俺を引きとめようとはしなかった。


それどころかドアに手を掛けたままの俺に、


「どうぞ?行くんでしょ、朔羅の元へ。


聞きたいことは聞いたし、もう行ってもいいわよ?」


うっすらと笑いながら促してくる。


俺はドアから手を離すと、再びイチに向き合った。


「させへんで」


唸るように喉から言葉が出て、


「え?」とイチが聞き返すのと同時だった。


俺はイチの細い首を片手で掴んでいた。


イチが短く悲鳴を挙げたが、その声を喉ごと潰すような勢いで指に力を入れると、イチは悲鳴を飲み込んだ。


この腕一つで―――簡単に折ることができる。ちょっと力を入れたら折れそうな、華奢な首だった。


親指の下で頚動脈が早いリズムで波打っている。


ごくり、とイチの喉が上下して俺を目の前にして目をいっぱいに開いた。






「響輔と男女の仲になるんは止めんけどな、あいつを殺す言うんなら話は別や。


その前にあんたのこのほっそい首を、俺がへし折ってやるからな」






イチは目を開いて俺を凝視すると顔を青ざめさせて、俺の手首に手を置いてきた。


「残念やな。サロメになりきれんくて」


挑発するように言い置いて、ゆっくりと手を離すとイチは顔を青ざめたままちょっとの間、絞められそうになっていた首元を押さえて息を整えるように喘いでいた。


それでもすぐに呼吸を整えると、忌々しそうに俺を睨み上げて、でも結局それに何かを言うことはなかった。


今度こそ出て行こうとすると、


「忘れ物よ」イチが俺のケータイを放って寄越す。それをキャッチしたと同時に、イチが再び口を開いた。





「最後にもう一つだけ。



ケータイを使って情報を盗み出す作戦、誰が考えたの?」







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