。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「ど、どちら様でぇ…」
出迎えてくれたのは見た目がいかつくてかなり強面の男。
三十代半ばかしら。玄蛇と同じ年代のようにも思えた。
その強面を不思議そうに歪めてあたしをまじまじと見てくる。
「イチ、お客さんか?」
すぐに背後からもう一人男が現れ、あたしは一瞬自分が呼ばれたかと思った。
「イチ?」あたしが聞くと、
「はぁ、壱衣って言いやす。あの…オタクは?」と険しそうな目をぱちぱち。
そう…それでイチって…
「あたし“ユウコ”って言います♪響輔くんに会いに来たんですぅ♪彼のお部屋は?」
あたしが怯みもせずにニコニコ聞くと壱衣って男はまたも目をぱちぱち。黙っていると…と言うか普段はきっと険しい目つきだろうけど
そんな風にまばたきされると、逆に可愛いし。
「キョウスケに?あいつの部屋は二階の手前ですが」
壱衣さんは戸惑ったように階段の上を目配せ。
「そ。じゃ、お邪魔しますね」
あたしはブーツを脱ぐと、壱衣さんが何か言う前に勝手にあがりこんだ。
「…え!ちょっと…オタク、キョウスケの何でぃ?」と壱衣さんはせっかくの強面も残念なぐらいあたふた。
「あたし?あたしは響輔の愛・人♪」
片目をつむってチュっと投げキッスをすると、壱衣さんとその後ろから様子を見に来た男は呆然。
あたしがスタスタと階段を昇っていく様を呆然と眺めながら、
「キョウスケっ!?てかあいつの愛人!?あいつメガネはどうしたんだ?いや、メガネが本命!?」
「バカっ!あんな良い女、メガネと比べる対象になんねぇだろ。メガネは男だ!
くっそ、キョウスケめ。ヒヨコみてぇなツラしてうまくやりやがって!」
ヒヨコ…?メガネ…ってのは虎間 戒のことかしら。
でも
いい女??ふふん♪そうでしょ。
玄蛇が「その格好なら大丈夫」の意味がようやく分かった。
階段を昇りきったところでちょっと下を見下ろすと、二人は鼻の下を伸ばしてあたしを見上げていた。
「…も、もう少し…見えそう…あとちょっとなのに!」
「なんて旨そうなおみ足!」
二人がひそひそ喋っていて、あたしはクスっと微笑むともう一度壱衣さんに向かいながらウィンク。
バタっ!!
派手な音がして、
「ぉい!壱!!大丈夫かっ!!」
壱衣さんは鼻血を出しながら引っくり返っていた。