。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。









「安心しぃ。俺はあんたが沈黙を守る約束してくれるんなら


あんたに危害加えるつもりはない。



ただ


あんたの行動次第で、俺はあんたを一生陽の目見れんようにすることは



簡単にできるんや。





それを覚えとき」



俺が微笑を浮かべて新垣 エリナの足首をそっと戻すと、新垣 エリナはごくりと唾を飲み込み俺を凝視してきた。


俺は救急箱から取り出した絆創膏を新垣 エリナに貼り付けながら


「そう怖がらんくても大丈夫や。


理由もなく誰かを殺ったりせぇへんから」


丁寧な手付きで絆創膏を貼り終えると、新垣 エリナは長い睫をまばたかせて俺を見下ろしていた。


その瞳はさっきの恐怖で揺らいでいたものとは違う。


一種の決意みたいなものが浮かんでいて、俺は思わず口元を引き結んだ。


いっそのこと怖がって恐れて俺を嫌いになってくれればその方が良かった。


でもそれ以上の複雑な感情を―――この女は隠し持っている。






何を―――考えている……?


この女を黙らせるか。





それはあの女狐、イチと同じ技で今すぐにで簡単に出来るが、


イチとは違った種類の覚悟みたいな…あるいは捨て鉢なものが浮かんでいて、


俺はこの女の本心を覗いてみたくなった。



「あたしが黙ってればいいってこと?そんなの卑怯だよ。


龍崎くんには事情があるかもしれないけど、それを龍崎くんは教えてくれない。


知らないまま黙ってるなんて、あたしには何のメリットもない。






ねぇ龍崎くん。





取り引きしない?」




暑くなんてないのに、新垣 エリナの前髪の隙間からは汗が浮かんでいた。


眉間に皺を刻んで苦々しそうに呟いたその一言に、決意と覚悟が浮かんでいた。





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