。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


バサッ


派手な音を立てて、アルバムが床に転がり、その拍子にページが開いた。


「ごめん!」


リコが慌ててアルバムを拾い上げる。


「いいって。それより怪我なくて良かった」


結構な厚さと重さだからな。


それはこないだ蔵から引っ張りだしてきたアルバムだ。しまおうと思っていて、置きっぱなしになってた。


「これ……叔父さま??若~い……隣の男の人は誰??かっこいい…」


リコがアルバムの一ページを見て、ちょっと目をまばたいた。


「どれどれ?」


あたしもアルバムを覗き込む。


それは今より数年若い叔父貴と―――雪斗が二人で映っている写真だった。


正月だろうか、小さなお猪口を手にして二人とも幾分リラックスした笑顔でカメラ目線を向けていた。


「これ……雪斗だ……」


あたしは雪斗の笑顔を指差し、おずおずとリコを見た。


リコは一瞬目を開いて、あたしを見ると、ゆっくりと写真を見下ろした。


目を開いたまま、


「―――…ごめん、変なこと聞いて」


と口を噤む。


「いや!いいって!!見られたくないもんならこんなところに置いておかないし」


あたしの答えにリコはちょっと苦笑いを漏らし、


「でも―――……何て言うか想像してた人と全然違う……」


そうぽつりと漏らし、目をまばたいた。


「想像?」


「うん……なんて言うのかな……そんな酷いことする人には見えないって言うか……


もっと根暗か、もっと凶悪顔を想像してたけど、


かなり……」



言いかけて、リコは口を噤んだ。





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