。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


どっちが正しい世界―――……


「目の錯覚かもしれないってことですか?」


黙って話を聞いていたキョウスケが口を開いた。


「まぁそんなようなものかしら。


怖そうに見えるけど、実は優しかったり」


彩芽さんはほがらかに微笑みながら、組員を眺め回し、





「優しそうに見えて、本当は怖い人だったり」





次に彩芽さんは戒とキョウスケをゆっくりと見つめ、目を細めた。


柔らかい声から一転、その声が少しだけ低く重みを感じた。


戒は唇を僅かに引き結び、一瞬だけ眉間に皺を寄せる。


探るように細められた琥珀色の淡い瞳の中に、黄金色の線が一本浮かび上がりキラリと光った気がした。


一方のキョウスケは無表情。


ドキリ、とした。


彩芽さんは戒とキョウスケの正体を知ってる。


だけど組員たちはまだ知らない。


盃を交わすまで―――


秘密にしていることを知っている筈なのに、何で敢えてこんなことを言うんだろう。





「目に映るのは錯覚かもしれない。


思い込みかもしれない。





大事なことを



見失わないで」






彩芽さんはそう言って静かに微笑んだ。






< 85 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop