君へ、約束の歌を。<実話元>
しーんとした空気の中で、続く言葉を待ってると、お母さんがそっと立ち上がった。
「その前に…
祐の遺書を見てもらった方が…
ちょっとこっちに来てくれる?」
廊下を進むお母さんに続いて、
私達も静かに足を進ませる。
「ここが、祐の部屋なの」
祐ちゃんらしい、家具がシンプルでぬいぐるみとかが少ない部屋。
「あの日のままにしてあるから、遺書も…
この引き出しに入れたままなの」
お母さんがゆっくり机の引き出しを開けて手紙のような物を取り出す。
なんだか直視できなくて、視線を外して、ゆっくり周りを見回してみる。
机の上に視線を向けて――…
『――あっ……!!』
…気付いた。
私が、誕生日プレゼントとして祐ちゃんにあげた時計…
青と黒のその時計が、
机の上に置かれていて。
『祐ちゃ…っ…!』
もう主のいない、
その"時"を…
静かに、刻んでいた。