アゲハ~約束~
第零話 始まり、と、始まり

1.

 アメリカ合衆国、その、ロサンゼルスの市街の一角にあるアパート。

 その中のある一室のチャイムが鳴り響いた。

 まだ朝早いせいか、なかなか家人は出てこない。

 少年少女がその前にじっと立って、ドアが開くのを待っていた。

 黒髪を長く伸ばした少女と、栗毛を短く切った少女、それに、背の高い少年。 

 全部で三人。


 やっと出てきたのは、どちらかといえば少し・・・いや、結構太目の、老齢の女性だった。

 白髪が目立っているから、おそらくは少女達の両親よりも年は上だろう。

 彼女は少女達の来訪に驚きはしたが、朝早くのこの時間を邪魔したことを叱りはしなかった。



『どちら様?朝早いのに、ご苦労様。』



 そういって彼女はにっこりと笑いかける。

 差し伸べられた手を三人のうちの、黒髪の少女―-―名を、アゲハという―――が握り、笑顔を変えす。



『キャロル・マクレガーさんのお宅はこちらでしょうか?』



 キャロル。

 その言葉を聞くと、一瞬女性の顔がこわばる。

 戸惑ったように髪をかきあげて、一、二度、言葉に詰まったようにため息をついた。

 けれどそうしてから、やがて顔を上げると、寂しそうな笑顔を浮かべてドアをさらに開ける。



『はいって。』



 彼女はそういって、アゲハたちを家の中に迎え入れた。

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