アゲハ~約束~

2.

 素朴で、のどかな町だった。

 日本の漁村を思わせるような町。

 港には、何台もの漁船が停泊している。

 その中で、浜をすぐ裏手に持つ小さな家が、写真の届け先だった。

 ボタンを押すと、ブーッというブザーの音が響く。


 遅れて、家人が現れる。



「・・・はい。」



 向こうから現れたのは、やつれた中年の男性だった。

 身体自体はがっしりしていて日に焼けているものの、頬がこけている。

 日本人の三人が現れたのを見て、すこししゃんと背筋を伸ばすが、それでも憔悴しきった感じは隠せない。



「・・・大丈夫ですか?」



 見かねて夏梅が声をかけると、彼は苦笑いを返した。



「ああ、大丈夫だ。どうした?日本人だよな?」



 何か?と尋ねる彼に、アゲハはごくりと息を飲み込んで、話を切り出す。



「・・・上田美佐子さんの、お宅ですか?」

「――――・・・」



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