アゲハ~約束~

3.

「・・・女房だったんだよ。歳は離れてても、近所じゃおしどり夫婦って有名でな。」



 それが、自慢だったんだ。

 茶を出しながら、悟と名乗った男性は呟くように言った。


 物悲しげに、微笑んで。


 それを聞きながら、三人は、出された茶をすする。

 ここ数ヶ月後無沙汰だった緑茶のにおいに、なぜか、懐かしいような気持ちがこみ上げた。



「・・・一人旅に出るのが好きだったんだ。あいつ。・・・今回も、ロンドンまで一人で行って。・・・その帰りに・・・まさかこんなすぐ近くで死んじまうなんて・・・」



 彼は、ソファに深く身を沈めると、窓の向こうの海を見た。

 この窓から見える青い海。




 その沖に、飛行機は墜落したのだ。




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