アゲハ~約束~
 その、柔らかな微笑に、ルフナは、胸を動かされて。

 彼女が視線をそらしたすきに、シャッターをきった。



「・・・カメラ目線じゃない写真なんて、撮って意味があるの?」

「・・・あるの。」



 彼は照れたように、嬉しそうに笑いながら、一枚の写真を差し出した。

 それは、昨日の、桜の上に寝転がるアゲハの姿。



「ほら。」

「・・・何?」

「この写真のアゲハ、すごく綺麗だよ。」

「・・・」

「いつか、絶対笑顔を撮って見せるから。それ、俺の目標ね。」

「・・・き・・・綺麗とか、簡単に言わないで。あと、絶対なんて、そんな言葉、嫌いだから。」



 そういって、彼女は顔をそっぽに向ける。

 ルフナのほうを、向けるわけがなかった。



 その顔は、真っ赤だったから。



 綺麗とか、言われるの、初めてだし。

 こんなに素直な人を相手にするのも、初めてだから。


 どうしていいか、わからない。


 ただ、思うのは。



 ―――この人の傍は、どことなく、居心地がいいということ。




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