アゲハ~約束~

5.

 二月二十八日。


 その日は珍しく雪が降り、とてもとても、静かな日だった。

 まだ積もるほどの雪ではないため、子供たちも部屋の中で静かにおねむだ。

 雪は夜まで降り続き、明日は積もるだろうと皆で話し合っていた。



「・・・あ。」



 夕食を食べ終えて、談話室で幸人や夏梅、それに園長も加わってコタツでテレビを見ていた。

 そのとき、ふとアゲハが、「ルー携帯」を見てポツリと言葉をこぼした。



「どうしたの?」

「うん・・・電池切れた。」

「また?」

「古いからなぁ、その携帯。」



 後で充電しよう、と、それをコタツの上にのせて、またぬくぬくコタツの中。

 テレビでは、去年一杯で消えたと思っていた芸人が、あいも変わらない芸を見せて、失笑をかっている。



「すぐ充電しなくていいの?」

「携帯ってほら、電池切れてもしばらく置いておくと電池はいるようになるし。」

「そっかぁ。」






 ―――平和だった。





 そのときは、まだ。





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