アゲハ~約束~
第五話 約束、と、アゲハ

1.

「――――――・・・」



 電車ががたんと揺れた衝撃で、アゲハは目を覚ました。



「・・・お、起きたな。」

「まだ、寝てて平気だよ。」



 幸人と夏梅が隣にいて、ごめんねと小さく笑うと、アゲハは顔を上げた。


 ――――懐かしい夢を見ていた。


 今まで自分に起こった事を全て総ざらいしたような夢。



 ルフナとの・・・出会いと、別れ。




「・・・大丈夫。」



 その夢は、何を意味しているんだろう。

 そんなことを思いながら、アゲハは、とうとう最後の一通になった封筒を見つめた。


 長い、長い旅だった。


 イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、アメリカにわたる旅。



「節操なしにとって回るから、あたしたちが苦労するんじゃない。」



 ふふっと笑って、アゲハはため息を漏らした。

 その五カ国を二ヶ月かけずに回ろうというのだから、たいした強行日程だ。

 けれどなぜかアゲハはその疲れを感じることなく、ただただ、身体を動かしていた。





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