《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~
十六巻*狂い咲きの桜
闇が山を完全に支配する前に、俺と花奏は千本桜公園へと歩く。



整備された道を歩き、『キープアウト』のロープで囲まれた場所へと足を踏み入れる。


鬱蒼と茂った草花を見下ろすかのように、樹齢500年の桜の大樹は空に向かって、枝振りも立派で、四方八方に伸びていた。



この大樹だけが確かに満開の桜を咲かせている。


この一角だけ、流れる時間から切り離されたような世界となっていた。不可不思議な感覚が俺の全身に巡る。



「本当だ…満開だね~」


吐息と感嘆の声を漏らし、花奏は狂い咲気の桜に見蕩れた。


「・・・来たね」


大樹の太い枝に乗り、呑気に幹に背中を預けていた輩が俺たちの前に飛び降りてきた。



「久しぶり…小笠原知弥」


「お前は…!?」
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