ひとまわり、それ以上の恋
 翌日、秘書課に配属が決まった初日。
「緊張する……」

 秘書課に配属されたのは一名だけ……私だけ。なんかすごく心細い。
 あのあと人事部長から聞いて知ったけど、プライマリーでは新人から秘書をとることはほとんどないそうだ。

 研修で仲良くなった同期の子たちも皆バラバラだ。
 四十一階の秘書室で室長が待っているというので、出社してすぐ私はエレベーターに乗った。

 私の想像上では、秘書のお姉さんたちは清楚で美しくてそつのない感じ。一体、どんな先輩社員がいるのだろう。

 ドキドキして秘書室を訪ねると、眼鏡をかけた男性が待っていた。彼が室長……物凄く頭の切れそうなクールな感じがする。

「お待ちしていました。私は森重といいます。よろしくお願いしますね。では、早速そちらで皆さんに挨拶しましょうか」

 私の想像していた通り、めくるめく花園……綺麗な女子社員の多いこと。五名くらいが一斉に振り返ったけれど、その仕草すら美しい。

「重役について出ている秘書もいますから、あとは個々に挨拶してください」
「新入社員の菊池円香と申します。ご指導よろしくお願いします」
 にこやかな笑顔と拍手のあとで、
「あなたの教育係を紹介します」
 と、室長の視線が動いた。

 つられて目で追うと、清楚な女性が立ちあがり、にこりと笑顔を見せた。



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