ひとまわり、それ以上の恋
「今夜は泊まっていくといいよ。明日の朝、専任のスタッフが来るから。五時には起きて、僕を起こして」

「専任のスタッフ……」

「あぁ。君に素手であれこれ触るわけにいかないだろ」

 ……そっか。ヘンな想像していた自分が恥ずかしい。

 専任スタッフがちゃんといて、バストメイクまでして私に着せてくれるということ……。二人きりじゃないなら安心じゃない。

 だけど……。なんだか分からないけど、すごくがっかりしてる自分がいる。

 泊まっていったって……欲情することだってないんだなって……。そんなの当たり前なのに。

「大丈夫です。ちゃんと四時に起きてここに来ます。今日はもうこれで」

「待って。何か怒ってる?」

 子供みたいな瞳を向けて、市ヶ谷さんが私を窺う。意地になってる自分を見透かされてしまったかな。

「怒ってなんか……ただ、市ヶ谷さんこそ、早く休んでください。ちゃんと起こしに来ますから、起きてくださいね?」

「うん……ありがとう。じゃあ、タクシーが来るまでもう一杯お付き合いするよ。サプライズティーがいいかな」


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