ひとまわり、それ以上の恋
 先程から私は、専任スタッフの嵯峨野さんから手厚いバストメイクの指導を受けている。

 リビングでは市ヶ谷さんが待機していて、着替えが終わり次第、嵯峨野さんがこのゲストルームに市ヶ谷さんを呼んできてくれることになっている。

 いちいち行ったり来たりしなくても済むように、間仕切りのある部屋で薄いカーテンをパーテーションにしてあるのだけど、最初はまずバストメイクから、と言われてこの有様。ありがたくおっぱいマッサージの仕方まで教わってしまった。

 これを考えてみたら、確かに……男性スタッフじゃムリ。セクハラで訴えられるオチだよ。美羽さんと社長は……そういう仲だから出来たのよね。あんなことやこんなことや……なんて想像してしまって煩悩をどうにか打ち消した。明日、美羽さんの顔が見られなくなっちゃうよ。

「サイズ、もう一個あげられそうですね」
「え、本当ですか?」

 鏡越しに会話をする。反対にうつっているのに嵯峨野さんの顔は羨ましいことに左右違和感のない、聡明な美人さんだ。

「生理は近いですか?」
「いえ、終わったばっかりです」
「最近、太りましたか?」
「そう……でもないような、あるような」
「あとは姿勢ですね。誘うブラシリーズは、マシュマロクッションが外側に入ってますから、もうちょっと寄せればこうして、ほら……」

 鏡の前に立つ私は……グラマラス美人だった。標準体型より痩せている方だけど、このぷよついたウエストは少し鍛えないとマズイ……と青ざめながら、背筋をシャンと伸ばしてみる。



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