月とバイオリン
 過ごしやすい優しい空気を持っている家。ここに住む人間たちは、家そのものととても良い関係を保っている。

風が流れ続けているために、呼吸がとても楽なのだ。

玄関ホールに飾られた、美しい女性の微笑が頭に浮かぶ。

大切なものを大切にと設定付けたのは、ミセス・シモンズの功績だ。

ピーターと共に歩み続け、今では天から見守っている彼女が、現在もこの家に満足していることを、シェリーはその肖像から知っていた。


 絵も悲しむものね――


 画家の力量と、モデルの生命力。そこに作りだすことのできない調和が発生したとき、永遠が生まれ呼吸を始める。


絵に宿るもの。

そして、音に載せられたもの。


 意識を傾けると、カノンはさっきよりも楽に拾えた。

近くから聞こえるようだ。シェリーは手を伸ばして窓を閉じ、耳を澄ますと大きくうなずいた。
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