月とバイオリン
「危ないことはしないでね。先生のおっしゃることはちゃんと最後まで聞いてから、反論するのよ。陽射しが強いから帽子を忘れないで。寄り道しないで帰ること」

「はぁい」

「行ってきます」

 中を見たままで扉を閉じるのが、メアリーアンの癖だと言うことに気がついた。だから記憶に笑顔が残される。

不思議に楽しい気持ちになった。ずっと子供の頃から、大好きなフレディの恋人を、自分は許さないだろうと予測していたのに、こんなに好きになるなんて。


 秘策の出番はないわね。


想像の敵に向けて練り上げられた作戦の書付を、早いうちに処分してしまわなくちゃ。

 くすくすと笑う自分をピーターが見ていることに気づき、処分を急ぐことをさらに堅く決意する。

素敵なおじいさまは、もし二人が結婚したなら、フレディにもおじいさまになり、私には……、親戚ということになり、今よりもっと親しくなれるに違いない。
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