月とバイオリン
 ピーターは大きな笑い声をあげ、勝利のごほうびにと、極めて興味深い特別な話を打ち明けてくれた。ロンドンと言うのは、いつの時代も。

関係者全員が鬼籍に入るまでは秘密の物語や、人々の生死に関わらず、未来永劫閉じ込められる真実を、ピーターはどれくらい隠しているだろう。

一記者から作り上げた新聞社、その社主を引退してから五年が過ぎた。

過去のことだけではなく今でも、たいていのことは知っているピーター・シモンズ氏は、小気味良い反応を見せる小さな聞き手を、大変に気に入っていた。

光の中の金の髪は、佳き夏の記憶を呼び起こす。

高き太陽、どの夏も、その髪を相手に何もかもを語ったのだ。


このままの生活が続いてもいい。


図らずも彼は、孫娘と同じことを考えていた。

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